
■ はじめに:なぜ「二次相続」で揉めるのか?
相続トラブルの多くは、**「遺産分割が複雑になる二次相続」**で起きています。
たとえば…
- 一次相続で配偶者が全て相続し、その後に遺言も信託もないまま亡くなった
- 財産が自宅のみで、兄弟姉妹で売却を巡る対立が起きた
- 認知症になった親の財産が凍結され、二次相続どころか管理すらできなくなった
これらはすべて、生前に信託等の仕組みを整えていれば防げた問題です。
■ 家族信託とは?基本のおさらい
家族信託は、「財産の管理・承継方法を、生前に契約で定める制度」です。
用語 | 内容 |
---|---|
委託者 | 財産を託す人(例:父) |
受託者 | 財産を管理する人(例:長男) |
受益者 | 財産の利益を受ける人(例:母) |
たとえば…
- 「父の財産を長男が管理し、母の生活に使い、母亡き後は子どもたちに承継」
というような設計が可能です。
■ 家族信託で二次相続対策ができる理由
✅ ポイント①:受益者の「次」を決めておける
通常の相続や遺言では、「亡くなった後に誰が受け取るか」は一代限り。
しかし、家族信託なら、
「母が亡くなったら、長男と長女に半分ずつ渡す」
というように、二次承継先を事前に指定可能です。
これにより、
- 母が亡くなった後の分け方で揉めない
- 財産を守りつつ、スムーズな承継が実現
✅ ポイント②:認知症対策にもなる
高齢者が認知症になると、預金の引き出しや自宅の売却などができなくなります。
でも、家族信託であらかじめ受託者(例:長男)に権限を持たせておけば、
- 相続前も→必要な支出をスムーズに対応
- 相続後も→トラブルなく管理・処分できる
というメリットがあります。
✅ ポイント③:遺留分対策・分割対策にも柔軟
家族信託は遺言のような「一括相続」ではなく、
- 一部だけを信託財産とする
- 財産の使用用途を限定する(生活費、医療費など)
といった柔軟な分け方が可能。
これにより、遺留分や争族(争い)リスクを事前に抑えることができます。
■ 具体的な活用事例
▽ ケース:夫婦+子2人の家族信託設計
● 家族構成
- 父A(委託者/自宅と資産の所有者)
- 母B(一次相続の受益者)
- 長男C(受託者)
- 長女D(二次承継者)
● 信託設計(例)
- 委託者:父A
- 受託者:長男C
- 受益者:
- 第1次:母B(Aの死後も生活費・住居費の受益)
- 第2次:長男C・長女D(母Bの死後、信託財産を半分ずつ)
● 設計のメリット
- 父の死後も、母は自宅に住み続けられる
- 母が認知症になっても、長男が財産を適切に管理できる
- 母の死後は、兄妹で自宅や資産をスムーズに承継できる
■ 家族信託 × 遺言・任意後見との組み合わせ
対策 | 役割 | 相乗効果 |
---|---|---|
家族信託 | 財産の管理と承継の指定 | 認知症・二次相続対策 |
遺言 | 信託以外の財産の指定 | 全体的な整合性を保つ |
任意後見 | 本人の身上監護(医療・施設) | 財産以外の判断を補完 |
→ トリプル対策が最も強力です。
■ 家族信託を検討すべき人のチェックリスト
✅ 配偶者が高齢で、生活の安定を優先したい
✅ 子どもたちに将来もめてほしくない
✅ 認知症や施設入所なども見据えておきたい
✅ 不動産の管理・売却をスムーズにしたい
✅ 二次相続時に、自分の意思で財産を渡したい人がいる
1つでも該当するなら、家族信託は有効です。
■ まとめ:家族信託で“相続の出口戦略”まで整える
- 家族信託は、相続だけでなく「その後」まで考える制度
- 一次相続対策+二次相続の指定+認知症対策までワンパッケージ
- 生前に備えることで、家族の「困った…」を防げます
「母が認知症になったら、家はどうなるの?」
「兄弟で不公平感を残したくない…」
「今のうちにできることは?」
信託契約書の作成から相続全体の設計のご相談はお気軽にどうぞ。
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