
こんにちは。行政書士の高橋ゆうこです。
ご家族にとって、トータルで負担の少ない相続を考えるにあたって避けては通れないのが相続税のこと。今回は、二次相続を見据えて、どんな対策が有効かを解説します。
■ はじめに:なぜ「二次相続対策」が必要なのか?
多くの相続対策は、「夫が亡くなったときに、妻が困らないように」という一次相続を中心に考えがちです。
ところが、一次相続で配偶者がすべて相続した場合、その配偶者が亡くなったとき(二次相続時)に、相続税の負担が急増することがあるのです。
✅ 配偶者には相続税の「配偶者控除(1億6,000万円 or 法定相続分)」がある
❌ しかし、それは 一度しか使えません
つまり、一次相続で配偶者に集中させすぎると、次の相続で子どもたちに多額の相続税がかかる危険性が高くなるのです。
■ 具体的なケーススタディ
▽ ケース:夫婦+子2人/資産1億2,000万円
- 自宅(土地建物):5,000万円
- 預貯金・有価証券等:7,000万円
【一次相続:夫→妻と子2人】
妻が法定相続分通り「1/2」、子が「1/4ずつ」相続したとします。
この場合、妻の相続分(6,000万円)は配偶者控除で非課税になります。
相続税の負担はほぼゼロ、ということも珍しくありません。
【二次相続:妻→子2人】
次に妻が亡くなったとき、この6,000万円がすべて子に相続されます。
このとき、
- 相続人は子2人のみ(法定相続人2人)
- 基礎控除は3,000万円+600万円×2=4,200万円
妻の遺産が6,000万円だと、課税対象額は1,800万円以上となり、
相続税が数百万円単位で発生します。
■ 二次相続を見据えた主な設計方針
① 一次相続で、配偶者以外にもある程度分けておく
- 相続税全体で考えると、配偶者に集中させすぎないほうが有利なことが多い
- 子にも適度に分配することで、二次相続時の財産額を抑えられる
② 二次相続を意識した遺言書の書き方
- 「配偶者に〇〇を相続させるが、その後は子どもAに渡すことを想定する」など、意向を明示
- 可能であれば代襲相続・遺言信託も検討
③ 不動産の分け方に注意
- 配偶者に居住権のみ与え、所有権は子に(配偶者居住権の活用)
- 共有にすると、後の売却や相続が複雑になるため避ける
④ 生前贈与や家族信託の活用
- 110万円の暦年贈与を地道に活用
- 将来の財産管理も見据え、家族信託で管理者を指定する方法も有効
■ 実務でよくある「一次相続だけ対策」からの失敗例
失敗パターン | 内容 | 結果 |
---|---|---|
妻にすべて相続 | 税金がゼロで安心と勘違い | 二次相続で税負担が急増、子が困る |
自宅を共有名義 | 分け方が不明確、遺言もなし | 売却不可・トラブルの元に |
遺言なしで法定分配 | 自宅の売却が前提になる | 高齢配偶者が住めなくなるリスク |
■ 専門家の視点から見る「バランス設計」
一次相続で意識すべきことは、“今の生活の安定”と“将来の相続税負担”の両立です。
▽ おすすめの基本設計
- 配偶者には、居住権 or 必要な分の預貯金
- 自宅の所有権や一部の資産は、子に相続 or 遺贈
- 財産配分の根拠を、遺言で明確にしておく
これにより、
✅ 高齢配偶者の住居・生活は守りつつ、
✅ 二次相続での相続税リスクも抑えることができます。
■ まとめ:相続は“2回分”で考えるのが得策
一次相続だけに集中するのではなく、配偶者亡き後の相続(二次相続)まで見据えることが、賢い相続対策の鍵です。
- 一次相続の配分を工夫する
- 遺言書で意向と方針を明確に
- 生前贈与や家族信託の活用も視野に
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