
こんにちは。行政書士の高橋ゆうこです。
「相続放棄しようと思っていたのに、もうできないと言われた…」
これは、相続手続きのご相談でときおり耳にするお悩みです。
相続放棄は、家庭裁判所に申述することで、被相続人(亡くなった方)の財産も借金も一切引き継がない手続きです。しかし、ある一定の条件をクリアしていないと、この放棄の権利を失ってしまうことがあります。
この記事では、相続放棄ができなくなる主なケースと、その防止策を行政書士の立場からわかりやすく解説します。
✅ 相続放棄ができなくなる主なケース
1. 相続開始を知った時から3か月を過ぎてしまった場合
相続放棄には、「熟慮期間(じゅくりょきかん)」と呼ばれる3か月の期限があります。これは、
- 被相続人が亡くなったこと
- 自分が相続人であること
の両方を知った時から起算して3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。
【注意すべきポイント】
- 遺言書が見つかったのが後日であっても、死亡を知った時点が起算点になる場合が多いです。
- 長期間放置して「相続するつもりはなかった」と言っても、法的には「相続を承認した」とみなされる恐れがあります。
2. 相続財産を処分・使用してしまった場合
相続放棄の前に、遺産(プラスの財産でもマイナスでも)を使ったり売ったりしてしまうと、「単純承認(すべてを相続する意思)」と見なされることがあります。
【具体例】
- 被相続人の預金を引き出して生活費に充てた
- 家や車を売却・譲渡した
- 遺品整理をした際に形見分けを行った
これらの行為は、結果的に「相続する意思があった」と解釈され、相続放棄が認められなくなるリスクがあります。
3. 相続放棄の手続きを家庭裁判所で行っていない
稀にあるのですが、「遺産分割協議で『放棄します』と言えばそれで放棄が成立する」と誤解されている方もいらっしゃいます。
これは法的には無効です。相続放棄は、必ず家庭裁判所に申述し、受理されなければ効力がありません。
💡 実際にあった事例
【事例】父が亡くなり借金があったので放棄するつもりだったが…
- 被相続人:父
- 相続人:長男
- 借金あり(消費者金融に200万円)
長男は「借金があるのだから相続放棄する」という意思を持ちながら、父の家に住み続けてしまいました。しかも固定資産税も自分で払い、光熱費の名義変更も行っていました。
→ 数か月後に相続放棄しようとしたが、「財産の使用があったため、単純承認と見なされ放棄は不可」と判断されました。
🔐 相続放棄ができなくならないためにすべきこと
- 死亡の事実を知ったらすぐに調査開始
→ 財産・負債の有無を速やかに確認しましょう。 - 勝手に手をつけない
→ 銀行口座・不動産などを使ったり動かしたりしない。 - 専門家に早めに相談
→ 相続放棄の期限や方法は複雑なため、司法書士・弁護士にご相談を。
📌 まとめ
放棄できなくなる主な理由 | 対策 |
---|---|
3か月以上経過 | 死亡を知ったらすぐ動く |
財産を使ってしまった | 一切手をつけない |
家庭裁判所に申述していない | 必ず申述書を提出する |
📝 行政書士からの一言
相続放棄は「黙っていれば成立する」ものではなく、きちんと期限内に手続きを行う必要があります。
少しでも不安がある場合は、早めに専門家に相談しましょう。相続に関する問題は、対応の「早さ」と「正確さ」が大切です。
相続放棄の申述書作成は司法書士・弁護士の業務分野ですが、当事務所ではお客様のご事情に合わせて適切な専門家にお繋ぎいたしますので、お困りの方はご相談ください。
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