
こんにちは。行政書士の高橋ゆうこです。
今回は、遺言執行者の復任権について解説します。
1. 復任権とは?
「復任権」とは、遺言執行者が自らの任務を、第三者に委任できる権限を指します。従来は「復任」と呼ばれていましたが、2019年7月1日施行の改正により「自己の責任で第三者に任務を行わせる権利」として明文化されました。
2. 改正前(〜平成31年6月30日)のルール
- 条件付きでしか認められず「やむを得ない事由」が必要
遺言執行者が第三者に任務を委任するためには、専門的知識や時間的制約といった「やむを得ない事由」が必要でした。 - 遺言書で復任権の許可がされていればOK
もし遺言書に「第三者に任務を任せられる」と明記されていれば、例外的に復任が可能でしたので、当時の遺言には明記されることが多かったようです。
3. 改正後(平成31年7月1日以降)のルール
- 原則として自由に復任できる
平成30年改正により、遺言執行者は「自己の責任」で第三者に任務を行わせることが可能となりました。法文では「特段の意思」がない限り、復任権を制限しないと解されています。 - ただし、遺言者が制限すればその意思が優先
遺言書で「復任不可」と明記されている場合は、それが尊重されます。 - 違反行為は無効+善意第三者保護
復任権を逸脱した行為は無効ですが、善意の第三者には対抗できない(=取引の安全が守られる)とされています。
4. 「どの遺言書に適用されるか」は作成日がポイント
- 遺言書の作成日が2019年(平成31年)7月1日以降 → 新法適用
- 遺言書の作成日が2019年(平成31年)6月30日以前 → 旧法適用、復任権の制限あり
※「相続開始日(被相続人の死亡日)」ではなく、「遺言書作成日」によって法制度が切り替わる点に注意が必要です。
5. 実務での影響と対応
- 実務負担の軽減
改正により、銀行手続/登記/財産整理などを第三者(司法書士、行政書士など)に委任しやすくなりました。 - 責任が明確化
委任した第三者の行為については、遺言執行者が「自己責任」で責任を負うことになります。 - 遺言書に明記すれば柔軟に扱える
「復任制限」や「特定の専門家以外NG」など、遺言者の意向を反映した条項を盛り込むことも可能です。選任・監督義務を明確にしておく工夫が求められます。
✍ まとめ
- 遺言書作成時には、復任権の取り扱いを意識して条文を設計する。改正後は明文化せずとも復任できるので、第三者への委任を制限したい場合には明確に書いておく。
- 遺言執行者が適切に第三者に委任できるようにしつつ、責任範囲や報告義務を明確化。
- **既存の遺言書(改正前作成)**を確認し、必要に応じて補足的な条項の追加や改訂を検討。
遺言書を作成する際にどんな点に気をつけるべきか、お悩みの方はお気軽にご相談ください。
⇩