
こんにちは。行政書士の高橋ゆうこです。
今回は、2019年から施行された自筆証書遺言に関する法律改正について解説しつつ、なぜ相続の現場では公正証書遺言の作成をおすすめするのかを、実務的な観点からお伝えします。
自筆証書遺言とは?
遺言書にはいくつかの種類がありますが、「自筆証書遺言」は、本人が全文、日付、氏名を自書し、押印することで成立する、最も手軽に作成できる遺言書です(民法第968条)。費用をかけずにすぐに作成できるという利点がある一方で、不備があると無効となってしまうリスクもあります。
2019年の法改正で何が変わったのか?
1.財産目録は「パソコン作成・通帳コピー添付」でもOKに(2019年1月13日施行)
改正前は、すべてを自書する必要がありましたが、民法第968条第2項の新設により、財産目録については自書でなくても良いことになりました。
▼具体的には:
- 財産目録をパソコンで作成したもの
- 通帳のコピー、不動産登記事項証明書のコピーなどを添付すること
が可能となり、目録の量が多くても作成が容易になりました。
※ただし、各ページに自署・押印が必要ですので、形式面での注意は依然必要です。
2.法務局での自筆証書遺言保管制度の開始(2020年7月10日施行)
さらに、2020年には**「自筆証書遺言保管制度」**がスタートしました(遺言書保管法)。これにより、法務局で遺言書を保管してもらうことで、
- 紛失・改ざんリスクの軽減
- 家庭裁判所での「検認」が不要に(※法務局保管分に限る)
といった実務的なメリットが加わりました。
それでも公正証書遺言をおすすめする理由
自筆証書遺言の方式が緩和され、使いやすくなったのは確かですが、相続手続きの現場を多数経験している立場から、やはり「公正証書遺言」をおすすめします。
1.形式不備による無効リスクがない
自筆証書遺言では、本人の署名や日付、押印の不備があると遺言そのものが無効になることがあります。公正証書遺言は、公証人という法律のプロが内容と方式をチェックするため、無効になる可能性が極めて低いです。
2.検認手続きが不要
自筆証書遺言は、法務局に預けていない限り、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。これに1~2ヶ月かかることもあり、相続手続きがすぐに始められません。一方、公正証書遺言であれば検認不要で、即座に相続手続きが可能です。そして、自筆証書遺言の場合と同じく遺産分割協議も必要ありません。
3.内容の正確性・実効性が高い
公正証書遺言では、公証人や行政書士などの専門家が遺言内容を法的にチェックするため、後々のトラブルになりにくいという利点があります。例えば、遺留分侵害や法定相続分とのバランスなども考慮して作成することができます。
また、公証人が遺言者の遺言能力の有無を確認するので、後にこの点についての争いが起こる可能性が低いです。
まとめ:安心確実な相続のために「公正証書遺言」を
2019年の法改正以降、自筆証書遺言は確かに作成しやすくなりました。とはいえ、**本当に大切なのは「遺言が確実に実行されること」**です。その観点からすると、公正証書遺言は最も安心・確実な遺言の形であると言えます。
相続は、残されたご家族への最後のメッセージです。
トラブルなく、円満に手続きを進めるためにも、専門家と一緒に、公正証書遺言の作成をご検討ください。
※当事務所では、公正証書遺言作成のサポートも承っております。お気軽にご相談ください。
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