
こんにちは、行政書士の高橋ゆうこです。
就労継続支援A型・B型事業は、「福祉事業だから利益が出にくい」と思われがちですが、制度と経営を正しく理解すれば、安定的な運営と利益確保は十分可能です。
この記事では、A型・B型それぞれの収益構造を「報酬体系」「事業収入」「経費構造」から具体的に解説し、利益を出すための設計ポイントまでご紹介します。
基本的な収益モデルの構成
就労継続支援事業の収益は、大きく次の3本柱で成り立っています:
- 障害福祉サービス報酬(給付金):国保連から支払われる
- 事業収入(作業収益):利用者の作業により得る売上
- その他収入(補助金・助成金など)
これらに対し、人件費・施設費・送迎費などの経費がかかります。
A型事業の収益モデル
✅ 収益の内訳(例)
項目 | 内容 |
---|---|
① 障害福祉サービス報酬 | 利用者1人あたり月約11万~13万円程度(※地域・加算で増減) |
② 事業収入 | 作業による売上(軽作業、製造、清掃など) |
③ 助成金等 | 雇用維持助成金、トライアル雇用助成金等(該当者のみ) |
✅ 主な支出
- 最低賃金以上の給与+社会保険料(法人負担分)
- サービス管理責任者、職業指導員等の人件費
- 施設賃料・送迎車両・光熱費 等
💡 モデル例(月間)
- 利用者:20名
- 国保連報酬:約12万円 × 20人 = 240万円
- 作業収入:約40万円
- 合計収益:約280万円
- 支出:人件費(職員+利用者給与)約220万円+諸経費40万円
- → 営業利益:約20万円
※給与支払額の設定次第で赤字にもなり得ます。人員配置の最適化がカギです。
B型事業の収益モデル
✅ 収益の内訳(例)
項目 | 内容 |
---|---|
① 障害福祉サービス報酬 | 利用者1人あたり月7~10万円前後 |
② 事業収入 | 利用者の作業による工賃原資(内職、農作業、清掃など) |
③ 助成金等 | 工賃向上助成金など(条件あり) |
✅ 主な支出
- スタッフ人件費(サービス管理責任者、支援員等)
- 工賃(平均月5,000円~15,000円/人)
- 施設運営費(賃料、送迎費 等)
💡 モデル例(月間)
- 利用者:20名
- 国保連報酬:約9万円 × 20人 = 180万円
- 作業収入:約15万円
- 合計収益:約195万円
- 支出:職員人件費 約130万円+工賃 20万円+諸経費30万円
- → 営業利益:約15万円
※無理のない工賃設定・効率的な作業設計が収益化のカギ。
利益を出すための3つの設計ポイント
① 【加算取得の最適化】
加算は大きな収益源になります。以下はA型・B型共通の主な加算です。
加算名 | 内容 | 金額の目安 |
---|---|---|
目標工賃達成指導員加算 | 工賃向上を図る専門職配置 | 約4,000円/人・月 |
就労継続支援体制加算 | 支援体制・記録体制の整備 | 約6,000円〜8,000円/人・月 |
福祉専門職配置加算 | 有資格者を配置 | 約5,000円/人・月 |
→ 毎月1人あたり1~3万円の加算が可能。加算の要件確認と計画的取得が重要です。
② 【作業内容と販路の工夫】
- 作業の単価と効率性を見直す(受注型→自主製品型など)
- 継続的に売上を上げられる取引先を確保
- ECや地域イベントでの販売強化も効果的
③ 【人件費・人員配置のバランス調整】
- 過剰な人員配置や高すぎる人件費は避ける
- 多能工化やICT導入で生産性向上
- 送迎業務の外部委託や共有も検討
A型とB型の収益モデル比較まとめ
項目 | A型 | B型 |
---|---|---|
国保連報酬(目安) | 1人あたり月11〜13万円 | 月7〜10万円 |
給与・工賃 | 最低賃金以上(例:月15〜18万円) | 平均工賃月5,000円〜15,000円程度 |
人件費負担 | 高い(利用者も雇用) | 中程度(職員のみ) |
作業収益の重要度 | 非常に重要(給与支払原資) | 補助的(工賃に充当) |
利益率の安定性 | 雇用リスクあり、波が出やすい | 安定しやすいが単価が低め |
行政書士からのひとこと
就労継続支援事業は、福祉としての意義とともに、経営的視点が不可欠な事業です。制度設計や収支バランスを誤ると、すぐに赤字に転落するリスクもあります。
行政書士は、次のような場面で強力な支援が可能です:
- 初期事業計画書の作成支援(収益モデル含む)
- 加算要件の整理・取得戦略
- 行政対応や制度変更へのアドバイス
まとめ
- ✅ A型は高収入だが高コスト、雇用管理と業務設計がカギ
- ✅ B型は安定性が高く柔軟、福祉性重視の事業に最適
- ✅ 利益を出すには、加算+作業収入+人件費バランスの最適化が重要
「うちの業種・資源で、どんなモデルが合うか知りたい」
「収支計画を一緒に作ってほしい」
当事務所は、就労継続支援事業の経営を事業者様の伴走者としてサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
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